「あ、ごめんなさい。……でも、話したことのない女子の名前を知らなくても不思議じゃないし、普通に知らないって言ってくれたら自己紹介するのに、って思って……」
「あはは、桜木さん、最高。もっと言ってやっていいよ!」
何が面白いのか可笑しそうに笑う佐川くんの隣で、崎本くんはムスッとした顔をしていた。
あー、大変。
さっきは動揺させてしまっただけだったけど、今度は怒らせてしまったかもしれない。
「ごめんなさい、崎本くん!この子、天然入ってて。悪気はないんです」
崎本くんの機嫌が悪くなったようだと感じたのだろう、慌てたように謝ったのは、新菜だった。
新菜が謝ることないのに。
ていうか私、別に天然じゃないよ。
「いいよ、謝らなくて。飛鳥、別にお前怒ってないだろ?」
「……怒ってない」
佐川くんの問いかけに答えた崎本くんは明らかに不機嫌で、言葉と声にずれを感じずにはいられなかったけど、新菜はそれでもホッと安堵したようだった。
「よかった。……えっと。じゃあ、ちなみになんですけど。私、佐川くんと同じクラスの白藤新菜です。この子は、桜木亜深」
「桜木亜深です」
私はぺこりと頭を下げたけど、崎本くんは「ふうん」と興味なさげな相槌を打っただけだった。


