この青空が溶けて見えなくなる前に。




「お前また教科書忘れたのかよ。
ほんとバカは同じドジ繰り返すよな」


「ほんっと一言多いんだよ!あんたはいつも!」



これ以上ヤナに構ってるとストレスがたまってハゲてしまいそうだから、速足でヤナの横を通過してその場を去る。  



これで解放されたと思ったのに。



「なんでついてくんの!」


「なんでってお前の隣のクラスなんだから、同じ方向なの当たり前だろ」



さっき反対側から歩いてきたくせによく言うよ。
どうせまだ私をいじめたくてついてきたんでしょ、この悪魔め。



いつか大魔王に昇格してやる。



「それで?大好きな大輝先生に借りたわけだ。
バカのお陰で朝から大好きな先生に会えてよかったな」


「……」



そうだ。
こいつのせいで朝の出来事が忘れかけてたけど私、大ちゃんと朝から会って話したんだった。



今も思い出すだけで胸がドキドキしてる。



大ちゃんを思うだけでこいつの悪態なんかなかったみたいに忘れられる。



「…ふふっ。かっこよかったなー、大ちゃん」


「……っ!」



私は無意識のうちに笑顔になり、教科書を持つ手に力を入れて教室へと再び歩き出した。











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「……ふふっ。かっこよかったなー、大ちゃん」


「…っ!」



大輝を思い出してほんのりと頬を赤くし、普段は自分に見せることのない笑顔を見せる希子にヤナは複雑な気持ちになる。



「…なんであいつなんだよ」



ヤナは俯いてギュッと手に力を入れる。



「…どっかの誰かさんより、兄貴の方が何千倍も優しいからね」


「…っ!……友里亜か」



背後から声が聞こえ、その方を向けば友里亜が壁に寄りかかって腕を組んでいた。



「希子のこと好きなら悪態ばっかついてないで、もっと優しくすればいいのに」



友里亜の言葉にヤナは軽く舌打ちをして、教室へ向かった。