頭の中が大ちゃんていっぱいだったから、反対側から歩いてくる奴に気付かなかった。
立ち止まってジッと見られてる視線を感じてそっちを見れば、そこにいたのは会いたくもなかった奴だった。
「…ゲッ」
「それ、こっちのセリフなんだけど」
イヤホンをとって嫌そうな目で私を見てくるもう一人の幼馴染み。
友里亜とは逆に私のことをいじめてくる、最低な幼馴染み。
「朝から一人でニヤけてるとか、ついに頭おかしくなった?」
「元々どこもおかしくないわ!」
「そうだよな。バカだからおかしくなったことも分からないか」
「はぁ!?バカバカ言うな!」
「バカバカって、俺バカ一回しか言ってないけど?」
「く、……~~~っ」
何か言い返してやりたいのに、言い返せない悔しさ。
威嚇するように睨めば、「勝った」とばかりに余裕の笑みを浮かべる。
そう、こいつが友里亜ともう一人の幼馴染み、ヤナ。
友里亜と性格似てて基本クールだけど、一つ違うのはこのムカツクドS。
私の言うこと成すこと全てにケチをつけてくる。
見た目は黒髪で趣味は読書の爽やか少年に見えるけど、中身はとにかくムカツク悪魔。
大ちゃんと朝から会えて幸せな気分だったのに、ヤナ(こいつ)に会ったせいで気分が一気に落ち込んだ。
ジッとヤナを睨んでいると、ヤナの視線が私の持っている教科書に向けられた。



