「それで?お前また教科書忘れたの?
俺に借りる前にヤナに借りればいいだろ」
「この前あいつに借りにいったら、お昼おごらされたからやだの!」
あの時の調子に乗ってるあいつの顔。
思い出すだけでイライラする。
あれからあいつにだけは物を借りないと誓った。
コツン
「…いてっ」
頬を膨らませてそっぽを向いていたから、大ちゃんが私に近づいてきていたのに気付くのが遅れてしまった。
教科書で頭を軽く叩かれた方を向いて、目の前に大ちゃんがいると気付く。
目の前に大ちゃんがいる、そう考えるだけで胸の鼓動は速くなる。
「もしかして俺に会うためにわざと忘れてんのか?」
「え、ち、ちがっ……うわぁ!?」
私の頭に教科書を乗せてニヤリと笑った表情のまま大ちゃんが顔を近付けてくるから、慌てて後ろに下がったら何もないところにつまずいてそのまま尻もちをついてしまった。
ち、近かった……
鼓動が一気に速くなって、胸が締め付けられるように苦しい。
私が転んだのがツボに入ったらしく、大ちゃんは大爆笑してる。
からかわれた。
すくにそう判断して大爆笑中の大ちゃんを睨む。
「からかって悪かったよ。
希子はからかいがいがあるから、ついいじめたくなるんだよな」
それは私にとっては子供扱いされていると同じ意味で。
私はまた頬を膨らませて、大ちゃんが差し出してきた手をとって立ち上がった。
「まぁ、教科書貸してやるから許せよ…な?」



