ふっ
大ちゃんは何かを思い出したのか、いきなり笑いだした。




「犬に追い掛けられて涙と鼻水垂らしながら必死に逃げる希子は…くくっ…今でも笑える…ふっ」


「ひどい!あの時はすごく怖かったんだからね!」




小さかった私には大型犬はライオンに見えて。
止まったら食われると思って必死に逃げてたっけ。




その時の私の顔を思い出したのか大ちゃんは爆笑してる。




今はこんな風に笑ってるけど、助けに来てくれた時の大ちゃんも必死な顔してたんだから。




『滑り台に逃げろ!』って言いながら犬を自分の方に引き付けてくれて。
その姿を滑り台の高いところからかっこいいなと思いながら見てたけど。




「…大ちゃんだってズボンとパンツ犬に引っ張られて…ぷっ…半ケツになってたよね」


「それ言うなよ!思い出さないようにしてたのに!」




大ちゃんは顔を赤くして怒った。
恥ずかしがりながら怒ったって説得力ないのに。




大ちゃんとの思い出は語りきれないほどあるけど、それをもう大ちゃんと話すことがないと思うと目が潤んでしまう。




それを大ちゃんに見せてはいけない、そう思って大ちゃんに背中を向ける。