陽だまりのなかの僕ら



「ただいま・・・」と小さく呟いて、そそくさと2階に上がろうとすると。

「詩麻?」
小さくて控えめな、お母さんの声がした。
やがてパタパタと音がして、リビングのドアが開けられる。

ぎゅっ、目を瞑った。

「・・・おかえり、詩麻。」

すぐ近くで声が聞こえて、慌てて目を開く。

疲れきったような顔で、お母さんは私を見つめた。クマができてる・・・。

「うん、ただいま。お母さんこそ、疲れてない?」
ひどくわざとらしく、私は笑って見せた。
玄関先で、私たちはまるで他人のように視線をチラチラと送りながら、もじもじと会話をする。

あ、とお母さんが思い出したように言う。

「・・・そうだ詩麻、お父さんが・・・」

心臓が飛び跳ねた。
私は慌ててローファーを脱いで、お母さんを無視して2階へ逃げるように走って行った。

すぐに自分の部屋へ、転びそうになりながら滑り込むように入る。

「は・・・は・・・ゲホッゴホ・・・」

こぶしをぎゅっとにぎって、ドアに背中を押し付け、へたりとその場へ座り込む。