陽だまりのなかの僕ら



たくさん近道をして、10分くらいで家に着いた。

でも私の家は、壮の家みたいにお城的な雰囲気じゃあ全くない。

そりゃあ、他の人にとっては綺麗に整備されたお上品なお庭とお家なのかも知れないけど、私にはとうていそう思うのは無理そうだ。

私が入りたくなくなるような雰囲気を醸し出しているのが、この家。

でも、入らなきゃ。拳を握りしめて、下唇をぎゅっと噛んだ。

くしゅ、と綺麗に刈り込まれた芝生を踏んだ。

家って、こんなに入りづらいものなのか。
そんな不安な気持ちをごまかすために、ちょっと軽くスキップをしてみた。

・・・気分は、上がるわけもなくて。

大きくため息をついて、玄関の前で止まった。

『Nanase』

玄関のドアには、可愛らしいデザインの表札がかけてある。玄関の隣には、お母さんが大切に育てた植物とか、お花とかが、綺麗に飾られている。


・・・私はこの苗字が好きじゃない。


しばらくのあいだ、玄関の前で佇んでいた。

・・・このあいだは、お母さんに黙って外泊しちゃった。それも、2日も。・・・お母さんは控えめだから、メールを何通か。


『詩麻、どうしたの?大丈夫?桜輔君たちと一緒にいるの?心配しています。』

『ご飯食べられた?藍実ちゃんに聞いたら、やっぱり桜輔君の家に泊まってるのね。良かった。楽しんでね。』

『お休みの日も桜輔君の家に泊まるの?日曜日の夕方には帰ってきてね。詩麻の大好きなもの作って待ってるからね。』


なんだか嬉しい気持ちもあったけれど、全部に『ありがとう』と返して、終わりにしてしまった。



それで、日曜日の夕方に帰ったら、笑顔で「おかえり」って言ってくれた。

まるで、私の気持ちを悟ってくれたみたいに。



私はもう一度ぎゅっとこぶしを作り、少ししてまたこぶしを緩め、玄関のドアを静かに開けた。