ぎゅうっとYシャツを握るおうちゃんに、私はどうしようもないもどかしさを感じた。
私が、おうちゃんを励ましてあげられたら・・・。
そんな邪心だって、湧いてくるほどに。
そよ風がやがて少し強くなり、遠くから聞こえる笑い声や話し声、蝉の音。全てかき消されていった。
そして、まるで私たちだけが存在する世界のような感覚に陥った。
「・・・ケホッ・・・大好きな人には、なおさら。」
おうちゃんはそう言ったきり、うつむいて黙り込んでしまった。
暫くの間沈黙が流れ、やがて藍実が語り出す。
「あたしだったら、ずっとお喋りしてたいな。だって、最後だもん。逢えなくなるんでしょ?」
いつになく真剣な眼差しで、でも柔らかく優しい目で、私を真っ直ぐに見据える藍実。
私は、藍実のこういう所が好き。
「・・・俺は」
隆貴がぼそっと言った。
藍実がすかさず私から視線を移す。
「俺は・・・わからないよ。」
藍実を盗み見ると、呆気に取られたようにぽかんと口を開けたまま。
「だって・・・今この時の感情と、いざその時になったらの感情って、違うでしょ。だから、そんなの、わからない。」
隆貴はどこまでも切なく、そして美しい顔をしていた。
