「あれ、桜輔に隆貴じゃん!」
藍実が大きな声で言って、長い廊下に響いた。
そしていっせいに女子の視線が私たちに注がれた。
「あっ、詩麻に藍実ー!」
隆貴さんが私たちに駆け寄ってきた。
「なんで3年生が2年の廊下にいるの?何か用があったの?」
私が聞くと、おうちゃんが答えた。
「うん。詩麻と藍実をお昼に誘うっていう用事がね。」
そして、柔らかく笑う。
いっせいに女子がどよめく。
「あれが先輩たちの彼女なの?」
「無理、勝てないわ・・・。」
「最悪ぅー!!!」
「えぇーマジで??」
ごめんなさい、私たち彼女じゃないです・・・。
誰に謝るでもなく、私はペコペコとただ頭を下げた。
「野次なんか気にしなくていいよ。」
隆貴さんが朗らかにそう言った。
私の肩をつかんでいるのは、何ででしょう・・・?
「りゅ、隆貴?あの、肩・・・」
「だめ。」
私の肩を掴む手に、ほんのり力が入る。
「え、隆貴さんの彼女って七瀬さんなの?」
「あ、無理勝てない。」
「完璧じゃん!」
「羨ましいなぁ・・・。」
ごめんなさいごめんなさい、私彼女じゃないです・・・
そう心の中で謝っていると、誰かに腕をクイッと引っ張られた。
「・・・おうちゃん?」
「だめ。詩麻は俺が見てあげるの。」
「・・・はいはい、わかりました。ヤキモチ妬きめ。」
隆貴はやれやれといった様子で、私の肩から手を離した。
「中庭でお昼食べよう。」
「あ、うん。」
なんでだろ。やっぱりおうちゃんの手は、あったかくて、安心する・・・。
