現実世界で捕まえて


「もっと、生きたいのでしょう?」

彼に言われたけれど
私は返事もせず
彼の腕の中に身体を埋める。

ひんやりと冷たい身体の彼。
死神だから冷たいのかな。

彼は私の唇を探してキスをする
唇も冷たい。
私達はキスまでの仲。
同じベッドで抱き合って寝るけど、最後までヤッてしまうと2人ともその場で消滅するらしい。
死神と人間で愛し合う事もできない。

「家族にも未練があるし、友達の花嫁姿も見たい。ドラマの続きもマンガの続きも見たい」

「もういいよ」

そんな話をしてもどうにもならない。

「ひとつ方法がありました」
彼は私の身体を離して、ジッと目を見つめる。

「何世紀か前に同じパターンがあったようで、ずっと調べていてさっきわかりました」

わかったって言うけど
私は嫌な予感でいっぱいになる。

「それって?」

「僕が身代わりになって、あなたが生きる。単純明快」

「身代わりってどうなるの?」

「別に……ただ魔界に落ちて永遠に暗闇に佇むだけです」

「それはダメ」

よくわからないけど
絶対的に絶望って感じでしょう。
永遠の暗闇って怖くない?

「でもあなたは生きます」

「絶対ダメ!」

「僕を忘れて。幸せになって」

嫌だ。
あなたを忘れるなんて絶対嫌だ。