現実世界で捕まえて


次の瞬間。

私と彼はマンションのリビングに移動していた。
ずぶ濡れの身体はもう乾いてる。

「また魔法を使わせちゃった」

「だから、魔法じゃなくて能力って言って下さい」

いつもの会話をしながら
互いに顔を合わせてクスッと笑う。

「残された時間を有効に使いたい。あなたと一緒に過ごしたい。何も欲しい物はない。ただお願いがあるならば……」

「言わなくていい。それが通ったらここで終わってしまう」

彼の指がそっと私の髪を撫でた。
冷たい指先が心地よい。

「この自分が、お人好しでおバカな人間に惚れると思わなかった」

「今までなかったの?」

「もちろん」

「私だって、こんなドSな死神に惚れると思ってなかった」

「優しい爽やか系が好きだったから?」

「うん。でもね……ずっと傍にいて見守ってくれる人が最強ってわかった。嫌われたと思ったら悲しくて苦しくて胸が張り裂けそうだった。ずっと一緒に過ごしたい人が大切ってわかった」

人間は大切な物や人を失いかけて、やっと気づくのだろう。


「僕を好きになると、ラストはハッピーエンドになりませんよ」

グイッと身体を抱き
彼はクールに耳元でささやく。

「それでいいの。最後まで一緒に過ごしたい」

心からの私の願い。

ラストに出会えてありがとう。