現実世界で捕まえて


「行きましょう」

歩き出した彼の背中を、なぜか重い気持ちで追いかける。

さようなら。
この世とさようなら。

死神さんとも
さようならなのかな。

「ラストのお願いが終わったら、死神さんが天界に連れて行ってくれるんですよね」

「連れて行きます」

「天界まで遠いのかな。天界でまた死神さんに会える?私はトロいから天界に……」

「あなたの魂を連れて行きます。時間に換算するとほんの1秒くらいで天界に行き、行くともう僕の記憶は消えてなくなります」

死神さんとの記憶がなくなるの?
そんなものなの?

ずっとこのまま一緒に居れると思ったけど
そうだね。そんなに甘くない。
私は甘い考えばかりだね。

「もう4つのお願いが終わり、あとひとつなので。もし、僕の存在が嫌なら僕はあなたの前から消えます。ラストの願いが決まったら呼び出して下さい」

「どうして?私を避けてます?」

歩きながらつい大きな声が出てしまい、すれ違った人に驚かれてしまった。

どうしてそんな話をするの?
私が嫌い?

「私が甘い考えばかりだから?つまらない願いばかりしてたから?だから嫌いになりました?」

嫌われた?私。

「違います」
目線をそらして死神は吐き捨て、歩く速さを上げたので黒いチェスターコートの裾を掴む。

「ハッキリ言って下さい。私が嫌いで目障りなら言って下さい」

どうしてこんなに必死なんだろう私。

そして
どうして泣いてるんだろう。