「もう二度と仕事以外で、私に話しかけないで下さい」
「留美ちゃん、本当に誤解してるけど」
「黙れっ!」
私は平野課長を突き飛ばし
誰もいない給湯室に、息を切らして飛び込むと
パチパチパチと……バラけた拍手が聞こえてきた。
ん?
「よくできました」
死神、いや西上係長が冷たい笑顔で私を迎える。
おのれ
また人の行動を盗み見してた?
「私にもプライバシーがあるから、勝手に覗かないで下さい」
「最後に刺し殺すぐらいの勢いが欲しかった」
「それ殺人です」
疲れてるんだから勘弁してよ。
かみ合わない会話をしていると、給湯室を通り過ぎようとしていた桜子ちゃんが足を止めて仲間に入る。
「あれー?あやしいですねー」
私と死神を見てニヤニヤ笑う桜子ちゃん。
「西上係長の笑顔は貴重ですよ。留美と何の話をしてたんです?」
その冷やかすような笑顔はやめなさい。
「別に何の話もしてないよ」
ムキになって桜子ちゃんに言う私とは対照的に
「人殺しの話をしてました」
サラッと死神は桜子ちゃんに言い「土屋さん。またね」って、これみよがしの微笑みを見せて去ってゆく。
驚く桜子ちゃんに私はどうフォローをすりゃーいいのだろう。
「えーっとね、桜子ちゃん。人殺しってゆーのは、ドラマの話で……」
「いやーカッコいい。あの上品な微笑みサイコー」
テンション高く盛り上がる。
人殺しの話はどうでもいいのね。
てか桜子ちゃん。
すっかり元気になってくれて嬉しいけど、そんなキラキラした目で私を見ないでちょうだい。