「おかえりなさい」
部屋に戻るとぷーんと美味しそうなビーフシチューの香りが鼻をくすぐる。
急にお腹空いてきた。
「ただいまです。お弁当美味しかったです。ありがとうございます」
お礼を言うと死神はエプロン姿で「当然でしょう」と返事する。
嫌なヤツ。
でも美味しかったから反論しない。
また明日お願いしたい。
向かい合っての夕食タイム。
クレソンのサラダがまた美味しい。
「魔法じゃなくて自分で作ったの?」って聞くと嫌な顔をされてしまった。
「魔法って言わないで下さい。邪悪な魔法使いと一緒にしないように」
邪悪って
十分に死神も邪悪ですけど。
「じゃぁなんて言えば?」
「そうですね。能力でしょうかね」
そしてドヤ顔。うわー嫌なタイプ。
「死神さんなら何でもできるんでしょう。自分で作るのってバカくさくないの?」
「その質問がバカくさい」
「どうして?」
「下等な人間には理解できないでしょうね」
「すいませんね」
ムッとしながらも
美味しいからおかわりをする私。
「死神さんはずっとここに居るの?」
「仕事ですから」
「そっか……」
目線を外して部屋の隅に置いてある、81万円のダイヤが入った紙袋をジッと見つめる。
「明日もお弁当作ってくれる?」
「いいですよ」
「ありがとうございます」
ずっと一緒に居るのなら……私はひとつの決断をする。



