現実世界で捕まえて


会議室にお茶を運ぶと
平野課長は「さんきゅ」って微笑んでくれた。

桜子ちゃんは平野課長が嫌いなのかな。
誤解してるのかな。
こんなに優しい笑顔の人が悪いはずないでしょう。

やっぱり
私は平野課長が好きなんだね。

あーぁ常務のお嬢さんに生まれたかった。
ふたつ目のお願いにしようかな。

そんな感じでいつもの朝が過ぎ
昼になるとお当番さんは電話番も兼ねているから、30分交代で桜子ちゃんとお昼を食べる。
女子社員の負担になるけど、昔からの決まりなので仕方ない。
それに早めに席に戻ってくる男性社員もいるので、彼らが戻ると私達は女子社員専用の休憩室に戻れるし。

今日は営業の品川さんが早く戻ってくれたので、私はロッカーからお弁当を持って休憩所に向かおうとすると、桜子ちゃんと入れ違い。

「ちょっと電話してくる」

「品川さんが戻って来たから、ゆっくりで大丈夫だよ」

「了解」

嬉しそうな顔は彼氏に電話だね。
いいなぁ。

それより、お腹が空きました。
てか今日は死神にもたされたお弁当。
中味はなんだろう。怖いな。

休憩室の扉に手をかけたら
先輩後輩達の声が聞こえてきた。

「藤沢先輩の花嫁姿は絶対綺麗でしょうねー」

「だよねー。桜子ちゃんは美人だもん」

桜子ちゃんの話で盛り上がってるんだ。
私も中に入って一緒に盛り上がろうとしていたら

「同じ同期なのに土屋先輩と違いますよね」

自分の名前が出て
中に入るタイミングを逃してしまった。