けど、あれ?

「久瀬君、もしかしてそれ重い?」

「いや。どうした?」

「だ、だって…」

歩調がゆっくりだから、

こっちもすっごくゆっくりになってしまうというか…

「そっちこそなんでそんな遅いんだ?」

「え?い、いや、私は久瀬君と2メートルの距離を保とうと…」

そう言うと久瀬君は少し驚いたような表情を私に向ける。

…え、え?

そう若干混乱していると、

久瀬君は再び前を向いて口を開いた。

「別に、普通に歩いてもらっていい」

「そ、そう?」

でもそれじゃ近づいちゃうんだけど、

いいのかな?

そう思いつつ再び歩き始める。

久瀬君の歩調はゆっくりで、

私の歩調は少し速い。