久瀬くんは〇〇恐怖症

「…まあ収穫ありってとこか」

和樹は満足そうにそう言って

カウンターから離れる。

「収穫?」

「なんでもねぇよ。
そういや今日、助けてもらったんだからちゃんと久瀬に礼言えよ〜」

「わ、わかってるよ」

「そ?んじゃおやすみー」

和樹はそれだけ言うと

手をひらひら振りながら部屋に入っていき、

残された私はただいま9時半を指している時計を見て

早っ、と一人呟く。

それにしても、お礼か…

いつどうやって言おうかな…

朝にでも会えたらすぐに言おう。

うん、会えたら言えばいいんだよね。

いざとなったら久瀬君のクラスに行ったらいいし…

そうしようっと。

私はそう決意して、

キッチンの明かりを消して

自分の部屋に入っていった。