「どいてよ。
私もう教室行きたいの」

「じゃあ一緒に行く?
同じクラスだし」

「そうじゃなくてね…」

どう言ってもまとわりつく杉浦君。

たまらず睨んでいると、

杉浦君が不意に周りを見やってにやっとする。

「なんか俺ら付き合いたてのツンデレカップルみたくなってますけど?」

「はい!?」

そう言ってバッと振り返ると

一斉に目をそらすみんな。

「〜!!」

「怒んなってば、いっそマジで付き合ってみる?」

「絶対嫌ですっ」

私はそれだけ言うと強引に杉浦君から離れ、

ずんずん廊下を歩いていく。

ほんとなんなの杉浦君って…!

付き合いたてのカップルとか、

ほんとにやめてほしい!

だって…

「久瀬君、やっぱり眼鏡かけてた…」

「そこがいいのよそこが!
その良さを理解できてこそ真の久瀬君ファンよ!」

久瀬君に私が杉浦君と付き合ってるとかいう

変な嘘のうわさ、知られたくない。

だって私が好きなのは久瀬君だから…

私は唇をきゅっと結んで、

授業が始まる10分前の、

少しざわざわした教室に入っていった。