「祐の気持ちも分かるんだ。でもね、だからこそあの子には、元気で明るくて大好きなばあちゃんの姿だけを覚えていてほしい」


「優木くんは、今の姿を知らないんですか?」


「あの子には何らかの理由をつけて、ばあちゃんに会わせないようにしてるんだ」


だからここまで進行していることを知らない。そう話す美津子さんの視線の先はおばあさん。決意が揺らぎそうになる。

「自己満足の何が悪い?」



優木くんの言葉が頭の中を駆け巡った。彼は、自己満足でも後悔だけはしたくない。たとえ、おばあさんが彼を覚えていなくても、おばあさんのいない結婚式をすることのほうがきっと、納得できない。


「・・・美津子さん」


だったら私のすることは、優木くんを説得することじゃない。優木くんの暴走に力を貸すことだ。



「私たちの結婚は、偽装結婚です」