「優木くん、本当にありがとう」


「俺は、自己満足でもいい。そういう人間だから。だから、そばツアーも企画出来た。ばあちゃんは参加出来なかったけどばあちゃんのために企画出来て良かったって」

「うん。あの企画は本当に良かったと思う。また、参加したいって声もあったもんね」


「だから、葵も自己満足でいけばいい。自分がいいと思っていればそれが自分にとっては最高の企画だと俺は思う。あと、金は給料が入ったら返してくれたらいい。飯だけはちゃんと食ってくれ」



優木くんは振り向かず、背を向けたまま私にそう言って、部署に戻って行った。


そのまま私も追いかけようとしたけれどせっかくの優木くんの好意を無にするわけにいかない。ガサゴソとビニール袋からおにぎりを取り出して、齧った。


「・・・美味しい」


優木くんと気まずくなって3日、私はまだ答えを出せずにいた。相変わらず、敵視した桐島さんの視線が気になるけど、前のように面と向かってぶつかってくることはない。

いや、逆にすれ違いざまに陰口を言う陰険なほうに変わったか。でも、優木くんがくれた言葉で、企画に対しての迷いはなくなった。

自己満足でいい。もちろん、それを売り物にするには自己満足だけじゃダメなのは百も承知。


でも、桐島さんに何を言われてももう負けたりしない。