強引同期と偽装結婚することになりました

「優木さんの企画が採用されなくてあなたの企画が通るなんておかしい。何が、子育てママのバスツアーよ。そんなの誰も行くわけないじゃない。子どももいないくせに、自己満足もいいところ」

「自己満足・・・」

「今から社長に撤回してください。自分のツアーは落ち度しかないし、需要がないので降りますって」


ダメだ。今日の私はかなり弱ってる。普段は聞き流せるこの子の言葉がグサグサと胸に刺さる。

自己満足。確かにそうか。だって、私は実際に子育てを経験したわけじゃない。

体験している人たちからただ、話を聞いただけ。そんな私がどれだけ企画しても結局は、母親の気持ちなんて分かるはずもない。


「自己満足の何が悪いんだ?」


悔しいけれど、心が折れる。こんなところで負けたくないのに、言われたことに返す言葉も出てこない。

俯いて、唇を噛み締めて涙を堪えていると革靴の音と声が聞こえてきた。


「桐島、自己満足の何が悪いんだ。企画なんてそこから始まるんだろ?喜んでもらいたい。楽しんでもらいたい。そんな気持ちから生まれる。そう思わないか?」

「そ、そうですけど」


「それに、立場に立っていないからその企画はダメだというのなら、このユニークバスツアーは誰も企画なんて立てられないし、失敗だ。もちろん、今年の春の俺が企画したそば打ちツアーも失敗。だって俺はじいさんやばあさんの立場じゃないからな」