優木くんのお父さんは海外転勤族でほとんど家にいない。そのため、優木くんがこの家の父親代わりをしているとか。だから結婚の報告も先ほど、電話でさせてもらった。

「祐のこと、よろしくお願いします」

電話口から聞こえてきたお父さんの声は、とても優しいものでいつか会ってみたいなと素直に思えた。


でも、毎日家に帰っていたのは家族のためだった。カッコつけてそういうことは言わない優木くんらしい。


だから、チャイルドシート付きのファミリーカーに乗ってるんだね家族のために。


「祐には随分、我慢をさせたのよね。この子は自分のことよりも弟や妹のことばかり優先するんだもの。でも、こんなに可愛らしい彼女がいたなんて、うふふ。ママ嬉しい」


「いい年してママとか言うなよ。はあ。勘違いするなよ。別に俺は、こんなのタイプでも何でもないからな。葵のことだからどうせ、そんなこと思ったんだろう」

「そうそう、だって祐兄のタイプって一生懸命で真っ直ぐでだけど甘えベタの人だもんね」

「そう。隠してたつもりかもしれないけどその人と会ってきたときだけやたらとニヤニヤしてるし、お土産付きだしね」

「でも、一回落ち込んで帰ってきたよな。あの時、オレ絶対フラれたんだと思ってた」

「「「良かったね、好きな人と結婚できて」」」