それがママの本音なんだ。だったらこの企画は最初から無理に決まってる。ママがツアーを望んでいないのに、企画してもニーズは見込めない。でも・・・

「だったら、ママリフレッシュツアーなんてどうですか?少しの時間、ママのための時間を設けるんです。そうですね、例えばマッサージツアーとか」

「確かにそんなんあったらいいし、めっちゃ行きたいけどその間子どもはどうするん?預けるってわけにもいかんし、そんな生後半年の子を預かってくれるとこもないやろ?」

ママと交代した優木くんがすかさず助け舟を出してくれたけれどやっぱりママの意見には勝てない。でも、美由紀ちゃんの話を聞いて、ママって本当に大変なんだなと思った。


それでもこんなに否定され続けてもなんとか企画を実現したいと思うのは、あのママさんの顔と千鶴ちゃんの手紙を思い出したから。

『もっと一緒に出かけたかった。誘って欲しかった。子どもと二人、閉じこもっているのは辛かった』

勝手に絶縁したくせに、そんなことを言われてもただの八つ当たり。でも、そうするしかはけ口がないなんて。千鶴ちゃんも地元がここではないから、親にも頼めないし、友達もいないと言っていた。

社交的なタイプじゃないし、ママ友も出来ないってグチってたこともあった。彼女のために何かをしたいとは思わない。でも、手紙の最後の一文に火をつけられた。


『葵はあたしと同じようにならないでね』