いやいや、それだけが全てじゃない。第一、企画が成功するまで彼は、そんな関係にならないって言ってたけど、ちゃんと欲情はしてくれている。

悶々となんだか変なことばかり考えていると頭をコツンとこつかれた。


「ゆ、優木くん?!なんで?」

「桐島がシフト代わってくれた。夫婦で企画するなら下見も一緒にした方が効率がいいんじゃないかって」

「桐島さんが?そうなんだ。それは嬉しいし、ありがたいね」

「篠宮さん、ちょっとお話があるんですけど、いいですか?」


結婚宣言をした当日、仕事もひと段落して予約の電話も少なくなってきていたので、私は周りから質問責めにあっていた。

そんな私をまた呼び出したのは、桐島さん。あの時のお礼もまだちゃんと言えてなかったので呼び出しに応じようと立ち上がった。


「今は、勤務時間中なので終業後にお願いします」


まさか、彼女にそんな風に言われるとは思わなかった。でも、確かに彼女の言ってることは間違っていない。

桐島さんの言葉に質問していた人たちもそそくさと仕事に戻って行った。


「あっ、き、桐島さん。お礼遅くなってごめん。その、前、電話代わってくれてありがとう。大丈夫だった?あのお客様」