「オレ、あそこでちょうどバイトしてたんすよ。就職きまったけど金、欲しくて3月いっぱいまで。でなんか二人、よく似てるなあって思ってずっと見ていたんすけど、やっぱりそうだ。結婚式、してましたよね?」

「な、なんの話かな?」

「いやいや僕、最後のバイトだったんで覚えてるんすよ。優木祐さんと篠宮葵さん。名前も同じですし、花嫁が遅刻寸前なんてなかなかないですし」


彼、柳くんの言葉に更にここにいるみんなのざわつく声が大きくなった。どうしよう。あれは偽装結婚だなんて言えない。
優木くんはただ、柳くんを睨みつけてるけどその睨みがまったく効いていない。


「あれ?えっ?まさか言っちゃいけなかったんすか?社内恋愛禁止?それともワケありっすか?」


「おい、新入社員。人のプライベートをズケズケ話すのは非常識だろ。まあうちは社内恋愛禁止なんてしてないけど。とりあえず優木と篠宮ちょっと、話を聞かせてもらおうか?」


優木くんが拳を握りしめて、殴りかかるかもしれないと不安になった瞬間、割って入ってくれた社長。

偽装結婚のことは社内の誰にも話していなかった。どうしよう。とにかく、私と優木くんは社長に呼ばれたので二人で社長の後を追った。


「で、どういうことだ?結婚式って。普通、そういうのは上司に話してからするもんじゃないのか?」