「そうだ。これはじいちゃんの指輪だ。ばあちゃん、俺、ばあちゃんとの約束ちゃんと守ったんだ。ばあちゃんを結婚式に招待するって約束。ばあちゃんは覚えてないかもしれないけど、俺はばあちゃんの分もちゃんと覚えてる」


「・・・覚えてるよ。ありがとう」


「ばあちゃんが笑ってる。ばあちゃんが、笑ってるよ」


初めて見たおばあさんの笑顔に涙が止まらない。まだ会うのは二度目だけど私が知ってるおばあさんはいつも無表情で無気力。

でも、今ゆっくりと顔を動かして私を見るその目は、とても温かくて光が指している。



「良かったね。たっくん」


きっと、今日のことをおばあさんは明日、覚えていないかもしれない。でも、ここにいるみんなが覚えてる。


そして、この笑顔の家族写真がずっと、おばあさんの姿そのものだって思い出せる。


「ばあちゃん、ばあちゃん。俺、ずっと覚えてる。ばあちゃんが忘れても、何度も何度もばあちゃんに話すよ。ばあちゃんがここにいてくれたこと。名前を呼んでくれたこと、絶対に忘れないから」


優木くんのおばあさんのための結婚式が素晴らしいものになり、私たちの偽装結婚は終わりを告げるはずだった。


それなのに・・・予想もしていないことが起きて、私たちの偽装結婚はまだ終わることがなかった。