「僕は、結婚式のことばかりに囚われて、お父さんが言われるようにその後のことを何も考えていませんでした。そんな男と結婚なんて許せないと思います。だから、白紙にすることを許してもらえませんか?」


「・・・それが君の答えなんやな。わかった」


「それでここからが本当の本題なのですが、葵さんと偽装結婚させてください」


「偽装結婚?」


三人が口を揃えた。偽装結婚?!結婚は白紙に戻したいと言うのに、偽装結婚をしたいと言う優木くんの真意が分からない。


「僕は、やっぱり曽祖母に結婚式を見せたい気持ちを変えることができません。本当に自分勝手なのは重々承知です」


「つまり、おばあさんに見せるための偽装結婚をしたいんか?それなら籍を入れて二回結婚式をするということでもいいんちゃうんか?なんでわざわざ偽装結婚にせなあかんのや?」

「それは、曽祖母のための結婚だからです。僕は葵さんのことが好きです。でも、その好きな人の気持ちよりも自分のやりたいことを優先させてしまった。それに、こんな僕がどれだけその気持ちを伝えても今は結婚したいがための言い訳に聞こえそうでそれが嫌なんです」

優木くんがそんなことを思ってくれていたなんて思いもしなかった。優木くんの出した答えは、結婚は白紙にする。でも、おばあさんには結婚式を見てほしいからそのための偽装結婚をさせてほしいということ。


それは、私への誠意でもあるもの。だから、もちろん、私の答えは決まってる。


「お父さん、お母さん。私からもお願いします」

「それは大いに構わんよ。おばあさんに見せてあげなさい」


「ありがとうございます。あの、今はまだ自分のことばかりでダメな男ですが、葵さんと一緒に企画を成功させたら葵さんにまたプロポーズします。その時はまた結婚のご挨拶に行かせてください」