明くる朝から状況は一変する。

「ご結婚、おめでとうございます!」

廊下を歩くたび、公務に出るたび、
俺は名前しか知らない女との結婚を祝福された。


そもそも、俺は結婚したいなんてひと言も言ってない。


どうしてだかモヤモヤとする気持ちのまま
あれよあれよと式の準備が進み、
俺はトリアと結婚した。

今でも結婚式の日のことについてはっきり覚えている事がある。


ドレスをまとったトリアに
「俺で良いのか?結婚、やめないか。」
と持ち出した時の事だ。

トリアはふんわりとした笑顔で俺を見つめ手をとり
「あなたが良いのよ。エルナー様。一生添い遂げます。」
と、誓って背伸びをし、俺の額にキスをした。

俺はそっけなく
「そうか…」
とだけ言い残し、その場を後にした。


何故その時、俺もトリアに愛を誓えなかったのだろう。