「アル。時間があるならここへ腰掛けてごらん。」

「?」

私は言われたとおり、中庭の真ん中にある小さな噴水のふちに腰掛けた。
するとアイビーが隣に座って口を開く。

「ここはね、昔、城の庭で腐った木々を棄てていた場所なんだ。」

「え?」

「今ほどここの廊下は使われていなかったし、
かつてこの一画は「廃墟」とまで言われていたんだよ。」

「知らなかった…」

「君を拾う2年くらい前かな…僕は庭掃除の使用人として…」

言葉を選びながらふと、遠くを見つめるアイビー。
「…?」

「いや、人として何かできないかと、この一画を中庭にする事にしたんだ。
土壌は腐り、ぬかるんでいた部分もあった。どうしようもできなかったよ。」

「アイビー、頑張ったのね。」

「違うよ。奇跡が起きたんだ。腐った木々ばかりのはずなのに、芽吹いたんだ。」

「え?」

「ほら、そこにある木。それがその時芽吹いた木だよ。」

中庭の中でひときわ堂々とした木が、私に優しい木漏れ日を届けてくれるように感じる。