君に遺された恋

トリアがいつもより激しく俺を誘惑する。


これも、もう明日から俺だけのもの。

エルナー王子の代わりではなく、俺だけのトリア…


「良い子だね、トリア。明日からは近い将来の妻として俺を一生愛してくれる?」

「ええ、そんなわかりきった事…
先生は?私を愛してるって…言って?」

「許可が下りれば明日から何度だって言ってやるよ。それまでお預け。」

「ふふっ、楽しみにしてるわね。」


3年間で声を抑えることが上手くなったトリアの荒い息と
ベッドのきしむ音だけが部屋に響いて、俺が絶頂に達したその瞬間。


慌ただしくドアを叩く音が部屋に響く。

ドンドンドン!!!
「トリア様!!!トリア様!!!」


「あっはっ…は、はい!」
トリアが余韻に浸る暇も無く体を起こす。


「エルナー王子の意識が戻られました!!!」



こんな日に…意識が戻った…と?

絶望…だろうか



いや、医者としてこの日を待ち望んでいたじゃないか。


俺はまだ甘く痺れる体を無理に起こし服を着ようとベッドから降りる。

トリアが俺の腕にしがみつき涙を浮かべ、ぽつりと震える声で言う。



「嫌だ…」

俺は…医者として…この城の主治医として…
その言葉に共感するわけにはいかない。

目が熱くなり、3年間エルナー様の代わりにトリアを愛した日々の思い出が蘇る。
だけど、今は…エルナー様のところへ行かなくては…

俺は声を振り絞り、無理やり笑顔を作ってトリアの頭を小突く。


「こら!そんな事言うな!
ちゃんと旦那さんを大切にしなさい。おこちゃまトリア様!」