君に遺された恋

王様は頭を抱えて動かない。

俺にどうしろと言うんだ。
俺は医師で、カウンセラーではない。

しかし…トリア様の事を思うと、
王様の言うことも分からなくも無い。


俺はため息をついて提案する。


「王様?それではトリア様の事は俺が精神面も看ます。
結婚とか、そういうことは考えられませんが、
彼女が望むのであれば社会に出られるようにサポートはします。
それでしばらく様子を見ましょう。」

ゆっくりと頭を上げる王様。

「そうか。ありがとう。本当にありがとう。」

俺の手を両手で握るその手は、本当に力強かった。


俺はそのままエルナー王子の部屋へ往診に向かう。
部屋では放心状態のトリア様がぼーっと王子を眺めていた。



彼女は孤独なんだ。



トリア様の背中がすごく小さく見えて、思わず王様の言葉を思い出す。


ーーーートリアを、手放そうかと思うんだ。


こんな状態で手放して、彼女が幸せになれるわけがない。

笑顔の無いトリア様のほっぺを引っ張り、
彼女を激励するが王様の言葉は頭から消えない。


この娘を、幸せにできるだろうか。
エルナー王子の代わりに、心を救うことが…


気が付けば心の声が漏れる。

「…なぁ…トリア様。俺のものにならないか。」

言いたかったのはそんなに直線的な言葉ではない。

「そうね……っ…ぇ?!」

明らかに動揺した彼女の声。

慌てて撤回するも遅い。

「ははっ、じょーだん!本気にした?
トリア様みたいな子供、相手にしないよ。」