まだ日も昇っていないのに、城に駆けつけると物々しい雰囲気。

「先生!!こっちです!!!」

俺がその「現場」に到着すると、
既に廊下ではぐったりしたトリア様が出産していた。
そして泣かない赤子。手遅れだったか…?とさえ思った。


しかしなんとか持ちこたえ、2人の一命を取り留めた時
既に外は白み、日が差していた。


次はエルナー王子の処置を…と、部屋に向かうと素っ裸の女が
王子の部屋から衛兵に引きずられて出てくる。

王子の名前を叫び「愛してる」「忘れないで」としきりに繰り返す。


なんだ、不倫か?


しかし部屋に入るとそこは血の海。

医者である俺でも思わずゾッとする。

「こ、これは…」


俺が言葉を失っていると、どこからともなく見知らぬ女が現れた。
彼女はエルナー王子を汚いものでも見るような目で見て言う。

「こいつは魔法をかけられて気を失ってるだけだ。
傷は首元の大したことない切り傷だから、
血を止めてやりさえすれば2・3日の内に目が覚めるはずだ。」

「ちょ、は?!魔法?!」

「そう。さっきの素っ裸の女が心いじって、私が頭いじった。
あとはよろしく頼むよ。」

そう言い残して部屋を去る女。

「ちょっと待て!」

意味が分からない。
お前らは魔女だったのか…?!

魔女って…今では探してもすぐには出会えないような人種だというのに
この現場には2人も…


その女を追いかけようとしたが、眼前のあまりに大量の血に恐ろしさがこみ上げ
足が震えて追いかけることができなかった。