それから半年後、私は順調に回復して普段どおりの生活が送れるようになっていた。

しかしエルナー様はまだ目を覚ましてない。

首には包帯が巻かれ、ほほはこけている。
そして24時間の点滴。


とても見ていられなかった。


「トリア様?」

「え?あ、はい。何だっけ先生…」

「ったく、またぼーっとしてたでしょ、
エルナー様の容態だけど、前よりだいぶ落ち着いてる。
正直もう死んじゃうかと思ったけど、なんとか持ちこたえた。
意識が戻るのは明日かもしれないし、1年後かもしれない。
それは俺には分からないけど、足や手を積極的に動かしてやってくれ。」

「…はぁ。」

「なんだよその返事。大事な旦那だろ?」

「えぇ、まぁ…」


大事と言われても分からない。
エルナー様は気を失う時まで私じゃない人を愛してたんだから…


そんな事を考えていると先生が私のほっぺをぎゅーっとひっぱる。

「なんて顔してんだよ。
そんなんじゃ、いつまで経っても王子の目ぇ覚めねぇぞ。」

「そうね…」


すると先生が辺りを見回し声を潜めて言う。

「…なぁ…トリア様。俺のものにならないか。」

「そうね……っ…ぇ?!」

時間が止まる…

驚く私の手を取り彼はニッと笑う。


「ははっ、じょーだん!本気にした?
トリア様みたいな子供、相手にしないよ。」

髪をぐしゃぐしゃと撫でて部屋を後にする先生。


子供ですって?

私はもう20歳。先生だってまだ27歳じゃない!