僕を床に打ち付けた父様が、胸ぐらを掴んで僕の上に馬乗りになった。


「やめてください父様…」

「俺に命令するな。あいつを…魔女を、もうこの城へ入れるな…!」

「ミラは魔女じゃ無い!まだ力が覚醒してないんだって!」

「うるさい!母親は魔女だそうじゃないか。」


首元を両手で掴んで僕を揺さぶる父の目は、
どうしようも無く怯えたようにも、憎んでいるようにも見えた。


「母親は関係ないよ。必ず力が覚醒するとは限らない。」

「レグルス…お前はあいつをどうするつもりだ。結婚なんて許すわけないぞ。」

「…そんな…事、まだ分からないよ。僕はまだ16だよ?!」


すると父様は僕の腹を蹴り上げて言った。


「とにかくもうあの女を城に入れるな。不快だ。」

「ぅ…く…」


反論したいのに声が出ない。

もう無駄だ。

父様は何も聞いてくれない。


そう悟ったのは今回が初めてじゃないけれど、
僕はある決心をしてゆっくりと立ち上がる。


城を出よう。