状況が飲み込めない。

私が王子の許嫁…?


「ルイス…それはいくら何でもやりすぎだわ…
会ったことも無い王子と結婚の約束だなんて…」


するとたちまち王様が歩いて行った方向で悲鳴が上がる。

私には分かった。ルイスが魔法をかけたから、
王様が少しの間気絶することになったんだ…


「その記憶を消すことはできないの?」

「一度かけた魔法によって変わった記憶は二度と変えられない…」

「そんな…」


そしてルイスはその場にしゃがみこんで頭を抱えた。


「ごめん…幸せになってほしくて…トリア…初めてできた友達なのに…」


今にも壊れてしまいそうなルイスを目の当たりにして、
私はルイスに出会った日を思い出していた。
こんなにも混乱した状況の中で、
そんな事思い出すなんておかしな話よね。


だけど、あの日見た強気なルイスの中にある孤独を、
私は少しでも救いたいと思った。

そして私お得意の「気丈ぶったトリア」が顔を出す。


「私なら大丈夫よルイス。王子と結婚できるなんて最高じゃない!ありがと。」