「へ?」


ルイスはハンカチについた一滴にも満たないような王様の涙が乾かぬうちに、
それをひと舐めして目をつむった。

この仕草…まさか王様に魔法をかけたの…?


「ねぇ、王様の記憶をどうしたの?」

「…」


黙り込むルイス。


「ごめん…私…私…」


ルイスの声が震える。


「余計な事しちゃった…」

「どういうこと?」


「王様の目の端の涙を見たら、魔女の血が騒いでしまってつい…」

「つい?何の記憶を消したの?」


「消したんじゃないわ。記憶を追加しちゃった…」


「何をどう?」



「トリアは…トリアは…お、王子の許嫁だって…」

「?!」

「最低。私、最低なことした。トリアの恋、応援したくて早まった…」


その場で座り込んでぽろぽろ涙をこぼすルイス。

「ごめん…」