「へ?!」

驚くルイスの手をとって、私は街を歩き出した。

「綺麗になって、彼に声をかけましょう?まずはその服ね!」


ルイスに合う服
ルイスに合う靴
ルイスに合うカバン


買ったその場で身につけて、ルイスがどんどん「女性」になってく。

ちょっと強引だったかしら?

いや、一見気が強そうに見えるルイスってば、
恋に対しては臆病なんだから、これくらい強引にいかなくちゃ!



そして想いを馳せていた彼のお店の前に戻ってくる。
しかし、彼の姿はもうそこには無かった。


「へへっ、やっぱ恋ってうまくいかないな。」

と悲しそうに笑うルイス。


「何言ってるの?まだ始まったばかりよ。
明日も、その次の日もここへ来て少しずつ彼のことを知るのよ。」

「え?」

「名前も知らない彼のこと、もっと知りたいと思わない?」

「…思う…」

「どんな声をしてるのか、どんな物が好きなのか、
彼のことを知りたくて、何をしてても手に着かないはずよ。
魔法は禁止!
少しずつ、ゆっくり愛を膨らませるの。
心があったかくなってね、それで…」


私が必死で話しているとトリアが吹き出して笑う。


「ははっ、なーんだ!私てっきりトリアは普通の恋なんかしてないと思ってた!」

「え?!」

「だって毎日違う男とさ…」

「わーー!わーー!それはもう辞めたの!言わない約束!
と、とにかくルイスの「普通の恋」応援するから!」

「ありがと…トリア、あんたさ、中身の無い空っぽな悪女だと思ってたけど良いやつだな。
今日は初めて街を笑顔で歩けた。ありがと。」

そう言うと優しく微笑むルイス。

「空っぽな悪女なんてひどいわ。だけど、そうね、
もうあんな事やめて私も恋できるように中身を磨くわ。」

私はルイスに持ってきていたパンを渡して私達はそこで別れて帰路についた。