君に遺された恋

「記憶に…入り込む…?」

「例えば今、あの人の涙を舐めて「私はあなたの恋人だ」って記憶させるんだ。」

「?!」

「そうしたら、彼が次に目を開けた時には
私の事を恋人だと思い込んでる彼ができあがる。」

「そ、そんな事ができるんだ…」


「な?人の記憶なんてもろいよ。
時間をかけて愛を語り合わなくても結ばれるってさ、
なんだかバカバカしくない?」

「そんな…」


そしてしばらくの沈黙の後、続けてルイスが口を開く。


「だけど…憧れるんだ。普通の恋ってどんなのかなって。
私は臆病で、すぐに魔法に頼ってしまうから、
もう、どうやって魔法無しに恋を始めたら良いのかわからない。」


お店の中の彼を力なく見つめるルイスに、
あぁ、きっとルイスも何の偽りも無いただの愛情がほしくてたまらないんだと悟った。


そして私は提案する。


「ね、一緒に恋を始めない?」