君に遺された恋

家に帰ると決まってお母様がおでこにキスしてくれる。

「お帰りなさい。可愛いトリア。」


ほら、愛情ってこんなにも美しい。


私はその瞬間、不覚にもせき止めていたものが壊れたみたいに泣いてしまった。


「トリアどうしたの?!」と、慌てるお母様に
「彼と別れたわ。」と、しおらしく打ち明ける。

「まぁ…」と、言葉を失うお母様に泣いてすがりつきながら


私はふと冷静になる。

別れた…?
愛されても無なかった。
付き合っても無かったわ。


男なんて、きっと私の容姿しか見てない。
可愛い子を抱く男のステータス?バカバカしい…

少しの間をおいて、私はある作戦を思いつく。


「ねぇお母様、確か私への求婚者の手紙があったわよね?」
「?。ええ、そこにたくさん…」
お母様が本棚を指さす。

「私、明日からその人達に会ってみるわ。」
「え?そんなすぐに無理しなくても良いのよ。
あなたはまだ若いし…今はまだ傷ついて辛いでしょう?」

私は「純情」な表情で答える。
「いいえ、早く新しい恋をして幸せな結婚をするの!」

そう気丈ぶって、私は翌日から、顔目当てですり寄る男という男を
片っ端から絶望に陥れる作戦を決行する事にした。