君に遺された恋

不思議と涙は出ない。


「最っっ低…」


そんな言葉ばかり溢れているのに、体は彼の体温を思い出そうとする。

何にも邪魔されずに肌と肌が触れ合う感じ…
私とは違うゴツゴツとした体に抱かれ
心まで剥がされるようにように激しく求められるあの感じを…


愛がバカバカしい…?


私はそうは思わない。
愛があるからこそ、全身で気持ちいいんじゃないか。


私は家の前に着くと、乱れた襟元を直し
いつもの「可愛いトリア」に戻るため
ドアに向かってニッコリと笑ってみた。

よし。うまく笑える。

ガチャ
「ただいまー!」