目の前で泣いている女の子に「じゃあ」って立ち去る訳にもいかず、近くの公園に立ち寄った。
隅の方に置いてあるベンチにすわると、女の子も、人が一人入れるくらいの隙間を空けて、座った。
まだ、学校が始まるまで時間あるし、大丈夫だよな。
「あの、さっきは本当にごめん。」
こういう時、なんて話し掛ければいいのかよく分からない。
また俯いて、見えない表情。
まだ、泣いてるのかな…?
「痛いところはある?」
何も言わず、首を振った。
揺れる髪から微かに香る、甘い匂い。
「そっか。」
そう言うと、会話は終わってしまう。
何か話題ないかな…。
「同じ学校だよね。1年生?」
コクンと頷く。
「えっと、名前は?」
「…川村七海です。」
「川村さんね。俺は山崎蒼汰、高校2年生。よろしくね。」
「よろしくお願いします。」
「……。」
「……。」
また会話が終わってしまった。
何で泣いてたのか、聞いていいのかな…?
少し聞くのを躊躇ったが、沈黙に耐え切れなくなった。
「あのさ、初対面の俺なんかが、こんな事聞くべきではないと思うけど、何で泣いてたの?」
思い出したのか、一筋の涙の跡。
肩を震わせながら、教えてくれた。
「…私、いらない子なんです。誰からも、必要とされてないんです。」
俺を見上げる君は、泣くのを堪え、唇を噛み締めている。
「そんな事ないよ。親にとって子は1番たいせ…」
「そんなわけない!2人とも、私なんかどうなったっていいと思ってるんだ。きっとそうだ。」
あぁ、今日は本当に暑い。
照りつける太陽は、君の事を嘲笑うかの様に感じた。

