「舞ちゃん、おはよう」
朔くんのお母さんが笑いながら私にそう言った。
本当ならキッチンにはお母さんがいる。私のお母さんが…。
いつも、つまらない話をして…。そんなに家事が上手じゃなかったお母さんだけど、いつも笑顔で優しくて、私のことを思ってくれ…て…。
涙が…涙が…。
「わ、私、ゴミを捨てて来ますね」
「あ!舞ちゃん」
私は朔くんのお母さんを無視して外に出た。そして、ごみ捨て場に誰もいないことを確認して私は思いきって泣いた。
いつも、頑張って仕事をしてくれた。私のこともお母さんのことも愛してくれたお父さん。
とても、とても幸せだった日々に…。悪がやってきたのだ。
「お母さん…お父さん…」
涙が止まらなかった。お母さんとお父さんが亡くなった日には泣かなかったのに…。
「もう、戻らなきゃ」
私は涙をふいて、これから住む朔くんの家に戻った。
「あ!舞ちゃん、おかえり。ありがとうね」
朔くんのお母さんはまた、笑顔でそう言った。
そして、テーブルの上には私の大好物ばかりが並んでいた。
「朔くん、まだ寝てるのよね。だから、先に食べてて」
「はい。」
私は今行っている高校をやめて近い朔くんの行っている高校に行くことになる。

