「ただいま…。」
私がそう言うとばたばたと朔くんのお母さんがリビングの方からやってきた。
「おかえり、舞ちゃん」
と笑顔でいう朔くんのお母さんは言っては悪いかとしれないけど、本当にお母さんに似ている。
どんなに家事が大変でも私にもお父さんにも誰にも苦しい顔を見せることはなかった。
「朔くんのお母さん…。あの、実は・・・」
私は、このテスト週間咲子と一緒に勉強したいと伝えた。
「いいに決まってるじゃない。おやつも用意するから。」
そう言ってくれてとてもうれしかった。
私はすぐに咲子の家に電話した。
『もしもし。』
電話に出たのは低い男性の声だった。
「あの、久留巳ですけど、咲子さんはいらっしゃいますか?」
『あー!!ちょっと待ってね』
始めて聞く咲子のお父さんの声。
聞いていた印象とは遠い声だった。でも、この人が咲子の夢を遠くさせた咲子のお父さんの声…。
『舞ちゃん?どうしたの?』
咲子が出た。
「朔くんのお母さんに言ったら家に来ていいって」
「本当?でも、お邪魔じゃないかな?」
「大丈夫だよ。だって、おやつを出すからって言って張り切ってたからさ」
「そっか…。」
いつもならもっと嬉しそうに「やった~!!」とか言うのに少しいつもの咲子と違うことを感じた。
「咲子…。大丈夫?」
私がそう言うと
「うん…。大丈夫。明日、行くね…。」
と言って電話が終わった。でも、明らかに大丈夫そうではなかった。きっと、何かあったんだ。
私は明日、聞いて見ようかと思った。

