「あー。なんで泣くねん」


天は泣き出した葵を見て、困った顔。

あたし、また困らせてる。

服の袖で涙を拭いて、泣き止もうにも上手くいかない。
じれったくって、悔しくって、無性に腹が立った。
好きなだけじゃ、あかんの?
押し付けがましい?


なぁ、天。

思い出が欲しいなんて、愛されてる実感が欲しいなんて

願ってしまうアタシは重い?





色んな想いを込めて顔を上げたら、しゃーないなぁって天が笑って。
少しよれた服の袖で涙を拭われて、きゅって抱きしめられた。


それでもあなたに、


「思い出なんかあったって、お前がおらんかったら意味ないやん」




──願いは届くん?




山本の手の中に握られたままのてるてる坊主が少しだけ微笑んだようにみえた。




てるてる坊主が晴らしたのは、

天気なんかじゃなくて、アタシの心。




「お前以外は何もいらん」




恋人なんて肩書きよりも、

今までの思い出なんかよりも、


その言葉の重さに涙が溢れた。