昨日からずっと降り続く雨、止むことを知らないこの雨は強弱を付けて窓ガラスを濡らす。
流れた雫ひとつひとつが、他の雫と寄り添って量を増す。
葵は眉間にシワを寄せたまま、ベランダの窓ガラスにぴとっと額をくっつけてぐずっていた。
山本がこの家に来てから1時間が経とうとしているのに葵の心は雨の降り続く曇った空に比例して。

「なぁ、葵。雨降ってるもんは仕方ないやん。こんな雨やったら外出れへんし」

今日は山本と二人で買い物に出かける予定だった。

好きな人が傍にいるだけでいいって言うけど、あんなの嘘。
やってそれだけじゃ……、嫌や。

ソファに座ったまま葵を眺めている山本を恨めしそうな顔で睨みつける。

「天(たかし)の日頃の行いが悪いからやろ」

俺の所為かよと笑いながらソファに座り直した山本に何故だか腹が立った。

だって、傍にいるだけじゃ物足りひん。
心の中じゃ、もっともっとって天のこと求めてるのに。

そのまま近寄ってぺちっと額を叩くと山本はへらっと笑う。

天は違うん?


「どしたん?お前なんか余裕ないやん。なんかあったん?」
「天は、それでええの? 天はもっとって思わへんの?」


もっとたくさんの時間を共有したい。
思い出が増えることを望んでる。

それは、我侭なん?