「その可能性も大いにある」

あぁ、もうだめだ…
目の先には笑顔で挨拶を交わすサークルメンバー

頭がついていかない
笑ってるみんなに対して、苛立ちさえも感じない


行きたくない
でも行かなきゃ

「ゆかーー!おっはよー!!」

私に気づいたのか、満面の笑みで手を振る1人の先輩

近づくに連れて、我慢できなくなる感情

「「おはよっ!!」」

みんなに挨拶された時に、一斉に溢れ出した涙
止まらない…
こんな私を、みんなは知らない
いつも、明るくて、はっちゃけてて、元気すぎる私
先輩にもタメ口使ったり、みんなの前でよく喋る
そんな私が、みんなの前で泣いてしまった


「ゆか…」

LINEを見ながら呟く友達
サークルの中で唯一全てを知っていて、いつも相談に乗ってもらってた子

「もうわかんない、わかんないよ、なんで…っ!」

目から溢れる涙は止まることを知らずに、次々と流れ続けた


1次会は、女子会

カラオケルームに入って、美味しそうなみんなの手料理が並ぶ
いつもならはしゃいで、1番に手を伸ばしていた

でも今は…食べ物を目にしても、何も思わない
美味しそうだとも
食べたいとも
色のない私の目に映る料理は、おままごとの料理との変わりが見えない

あ、また、目頭が熱い
と思った時にはもう遅くて…
一瞬にして、水滴は頬を伝った

「ごめ…私ちょっとトイレ…!」

手に持つのは携帯だけで、部屋を飛び出す


どんなに泣いても、涙は枯れないのに…
泣いて泣いて泣いて…
ここがカラオケでよかった
周りの音でだれも私の声なんて聞こえてないだろうから


どれだけの時間がたっただろう
ようやく収まったと思えば、また溢れてくるから
もう…目ぇ痛いよ…

携帯を開くと
「ゆか、今どこにいるの?心配だよ」

ミホ…


「今1階のトイレ
今行く」


階段を上がる間、必死に涙を堪えた
晴れている目を隠すために、俯きながら、ゆっくりとドアを開けるけど、みんなの目がこっちに注目するのを感じる
でも、それをよそに私はミホに
「私、ちょっと抜けてい?」
と呟いた

申し訳ないと思ってる
心配かけて、企画側の人間なのに、抜けるなんて…
でも、今の私は、謝る言葉を言えるほどの余裕もない

コクコクと頷くミホは、今にも泣きそうなくらい心配な目で私を見ていた
その表情に私は、ドキリとしただけで、痛みは感じなかった
ミホにこんな表情させてるのは自分なのに、最低…

その目から目を逸らして今度は、鞄を抱えながら、今できる精一杯の平然さを保って私は部屋を出て行った…


「…」

何も言えない
目の痛みだけがはっきりと感じる


店を出ると、賑わう明るい町

騒いでいる数人のグループ
笑いあう男女
派手な格好をした女子高生

そんな中、ひとりぼっちの私は、新宿の町を彷徨った