この車を知ってる数人が車の真横にきて魁斗に何やら話しかけていた。


俺を呼ぶ声も聞こえるが俺は知らねーし、余計な奴と口も利きたくね。


困った顔で助手席に座る魁斗がこっちを見るが邪魔者を排除するのも魁斗の役目と無視を決め込む。


俺には関係ねー。


何気なく並木道に目を向ければ黒に身を包んだ女が目に入った。


木に寄りかかり空を見上げてる。


さっきの俺の様に満月を見てるのか?


いや、見てる様で見ていない瞳。


特別綺麗でもない。


特別スタイルがいいわけでもない。


なのに目を奪われた。


周りの雑音さえ消していく。


その女は上を向いていた顔をユックリとこっちに向ける。


腰まであるブラウンの髪。大きな目にポッテリとした唇。


消して細いとは言えない体つきに、ロングの黒のワンピース。


一瞬で目を奪われた女に、フルスモークで見えるばすがないのに目があった様に思えた。


ドクン…


心臓が音を立て、目が離せなくなる。


見えてるのか?


そんな疑問が頭をよぎった時車がユックリと走り出す。


女が車を目で追うことはなかった。