「何が分からない?」
至近距離で見つめられる
こうも凝視されると逸らせないんだけどな…
「……………」
「……翔瑠」
気不味くてふいっとそっぽを向いた
「翔瑠」
頬を大きな手で挟まれて顔を向けさせられた
頬から伝わる水原先輩の確かな温度がじわじわ広がっていく
「な…んで……先輩はそんなに……優しいんですか」
一度口から出てしまった本音は自分では止められない
「翔瑠?」
「だって……だっておかしい!みんなが知ってることを知らない!他人の気持ちがわからない!感情の制御ができない!そんな私に優しくするなんておかしい!」
「………」
「中学の時のあの事があってから!私は変な子って言われてみんな離れていった!女の子なのに恋愛にもオシャレにもアイドルや俳優にも興味がない!私は女の子として欠けてるって言われた!」
激情からくる涙が溢れて止まらない
こんな事を先輩にぶつけてどうする
だけど止められなかった
先輩なら
先輩なら受け止めてくれる
なんて
なんの根拠もない不確かな淡い期待を
愚かにも抱いたんだもん

