ケガのためレッスンはしばらく中止になった。
座学をという話にもなったが、無理に急ぐ必要はないとクロウの配慮によりしばらくはゆっくり休息をとれることになったのだ。
そのため、暇を持て余した梨乃は城内を散策していた。
目新しいものばかりの城内。
どれも高級そうなものばかり。
そっと開いた扉の中は広い部屋になっている。
そこには数々の写真が飾られていた。
「綺麗な人・・・」
一際大きな額縁に飾られている写真には、とても美しい女の人が写っていた。
優しく微笑むその女性は、栗色の長いウエーブがかった髪。
綺麗なティアラをつけ美しいドレスを身に纏っている。
「誰だろう・・・。見たことない人」
でもどこか、懐かしいような気がする。
梨乃はじっとその写真を見つめていた。
しばらく見入っていた梨乃は、名残惜しい気持ちを抱えながらその部屋を後にする。
あの写真に写っていた人はいったい誰なのだろう。
いつか、会えたらいいな。
そんな気持ちを抱きながら。


