帰りたい。
きっと、待っていてくれている彼の元へ。
居場所をくれた人たちの元へ。
「梨乃さん?」
「ごめんなさい・・・。少し、寂しくなってしまって・・・」
「そう・・・。そうよね、心細いわよね」
「違うんです・・・。すごくよくしてもらって、ここにいることは、すごく心地よくて・・・でも・・・」
複雑な感情に、自分でもわからなくなる。
戻りたかったこの世界は、自分の居場所があるこの家だった。
ただ自分の存在がないだけで、二人の姿や優しさは何の変わりがないのに。
それでも、戻りたい場所は、ここじゃない。


